「祈り・癒し」 想念と心・幸福の関係を脳科学・認知科学で検証  

 

以前「霊障や生霊」をテーマにした記事で「否定的な悪想念を抱くこと自体がそのまま存在ストレスである」ということを書きました。

 

その補足記事として、脳科学と認知科学で具体的にその構造を見ていきましょう。前回の記事⇒  心の苦しみや病気の本質は「霊障」や「生霊」のせい?

 

今回のテーマは「祈り・癒し・想念」をテーマに書いていますが、これは心・精神の病の人だけではなく一般の方の運や幸福とも関わるテーマです。

 

他者に怒り・妬み・恐れ・不安などのネガティブな感情を抱く時、何故それ自体が存在ストレスとなるのか? スピ的な思考では「悪想念の返り念障」とか何とか言っていますが、

 

そういうものではなく、もっとシンプルな生物学的な現象なのです。ですが、聞き慣れない医学専門用語での説明になるので、複雑で難しいと感じるかもしれませんが、できるだけシンプルに構造を説明してみましょう。

 

ストレスを受ける 視床下部からコルチコトロピン放出ホルン(CRH)が放出 ⇒  ③  CRHは脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモンの放出を促す ⇒  副腎皮質からストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が促進される。

 

そしてストレスホルモンであるコルチゾールは、それ自体は悪者というものではなく、「短期的に人がストレスにうまく適応するため」に分泌されるものであり、コルチゾールがあるからストレスに対抗することが出来るわけなんですね。

 

ですが過剰なストレスにより多量にコルチゾールが分泌された場合、海馬の神経細胞を破壊し萎縮させることがPTSD患者の脳のMRIで観察されていますし、虐待された子どもは海馬・扁桃体の大きさ小さくなっていることも確認されています。

 

海馬や扁桃体は、うつ病や境界性パーソナリティ障害とも関係しています。そして虐待を受けた子どもの場合は、うつ病・境界性パーソナリティ障害だけでなく、PTSD・パニック障害・解離性同一性害・摂食障害などになる可能性が高いことも分かっています。

 

昔の人はこういう原因不明の精神症状に対して、「憑き物」「悪魔」とか「過去生の悪業」とか何とか言って辻褄合わせの理由づけをし、そうやって原因不明な症状への不安や恐怖への社会的対応を図ろうとしたわけですね。まぁ現代でも相変わらずそうしている人もいますが。

 

話を戻しますが、通常の健全な人の環境であれば、以下の「ネガティブフィードバック機構」によって一定の範囲に制御されています。

 

●ネガティブフィードバック機構

血液中のコルチゾールの量が増える⇒  コルチゾールが下垂体の前葉を刺激し、副腎皮質刺激ホルモンの分泌を抑制する。⇒ 副腎皮質を刺激していた副腎皮質刺激ホルモンの量が減り、コルチゾールの分泌も減少。

 

ですが慢性的なストレスによって長期にわたって過剰に分泌されると身体に様々な弊害が起きてくる、というわけです。

 

以下、参考PDF「ストレス反応及びカタ(過多)ストレス対応法」より一部引用抜粋。

CRH :コルチコトロピン放出ホルモン(ストレスホルモン)    5-HT:セロトニン           

↑=増加 ↓=減少

 

1.精神神経系

①ストレス⇒ CRH↑ ⇒ 5-HT↓ ⇒ 精神的自覚症状↑   

関連する疾患と症状:ノイローゼ、パニック障害、PTSD(心的外後ストレス障害)、緊張性頭痛、偏頭痛、不眠、睡眠障害、 心因性多飲多食症、拒食症、うつ状態な ど。

 

②ストレス ⇒ 交感神経↑・CRH↑ ⇒  5-HT↓ ⇒ 下行性疼痛抑制系↓   

 関連する疾患と症状:痛みに関する線維筋痛症、慢性疼痛など。

 – 引用抜粋ここまで- 

 

参考PDF「ストレス反応及びカタ(過多)ストレス対応法」は、脳科学的なメカニズムだけでなく対処方もシンプルにまとめてますので参考にどうぞ。

参考PDF⇒ ストレス反応及びカタ(過多)ストレス対応法

 

このような脳科学的・生物学的メカニズムによって、「ネガティブな想念」である「怒り・妬み・恐れ・不安・恨みや呪いの祈り」などが自分自身に悪影響を及ぼしている、というわけですね。

 

心・精神の病とそれによる心身の不調というものは、存在ストレによって「自覚が出来ない無意識的なメカニズムの不調和が先に起き、その後に心理的反応として現れるのです。だから生霊とか返り念障とかではなく、除霊とか関係ないんですね、通常は。

 

まぁイメージ療法・プラセボ効果、そして変性意識での癒し効果というものが人によって効果を発揮することもあるので、「全面的に効なし」とまでは言いませんが、まずはキチンとした治療を受けましょう。

 

イメージ療法・プラセボ効果、そして変性意識での癒し効果のメカズムに関しての補足記事は、また次回に書きます。

 

 

祈り・癒しと心・幸福の関係を脳科学・認知科学で検証

 

ホンマでっか!?TV」でおなじみの医学博士で脳・認知科学者中野 信子さんという方がいます。独特な優しい雰囲気の綺麗な人で、この方が「脳科学から見た祈り」という本を出しています。

 

先に書いたように、ネガティブな悪想念を発した時に出る害をなすホルモンとメカニズムがあるように、それとは逆にポジティブな良想念の祈りは、「ベーターエンドルフィン」「ドーパミン」「オキシトシン」と呼ばれる「脳内快感物質」が分泌されやすいとのことです。

 

ストレス耐性に効果的であるセロトニン神経は、オキシトシンが分泌される事で活発になります。なのでオキシトシンが充分に分泌されている時は、人は満たされた気持ちで過ごせるということですね。

 

そして「脳内快感物質」多幸感や快感をもたらし、脳を活性化させ、身体の免疫力を高める、つまりストレス過剰の時とは正反対のことが起きるわけです。また、記憶力・集中力アップにも効果があるといわれています。

 

つまり、「祈り」も良い心がけで使えば効果は期待できるわけです。そしてラストにもうひとつ記事を以下に引用紹介します。

 

「うつ」を霊的な原因と結びつけて、「霊性や霊的価値」に意識を向けさせるスピ系の人がたまにいますが、「カナダにおける14年間の研究」で、その効果の程を見て見ましょう。

 

「信仰は大うつ病性障害の発症を予防する:カナダにおける14年 縦断研究」 より引用抜粋

(前略)
本研究では,宗教的儀式への参加,霊的なものの評価,霊的な人間あるという自覚がMDEの発症に及ぼす影響を明らかにするため,一般人口を対象とする縦断的調査を行った。
(中略)

〈方法〉

1994年に開始されたCanadian National Population Health Surveyは,Statistics Canadaがカナダ国民に対して2年ごとに健康と社会経済的状態の情報収集を行う調査で, 本研究では2008年までの計8回分のデータを用いた。

1994年の時点でMDEではなかった16歳以上の12,583名を追跡調査した。症状評価は大うつ病の簡易質問票であるComposite International Diagnostic Interview(Kesslerら,1994)を用い,宗教的儀式へ参加頻度によって,

月1回かそれ以上(monthly attenders: MA),月1回以下から年1回(occasional attenders: OA),なし(nonattenders: NA)の3分けた。

〈結果〉調査開始時点において,MA群は他の2群と比較して,高齢者,女性,既婚者,組織への所属者がより多かった。14年間の追跡間中2,355名がうつ病を発症し,うち1,645名が新規発症,710再発であった。低所得者の割合はNA群が最多であった。

MA群では,他の2群よりも悲嘆の程度が小さく,うつ病の病歴と家少なかった。社会的援助はMA群とOA群間で差がなく,NA群より少なかった。MA群の約1/2が組織に所属しており,この割
合はOA群で1/4,NA群では1/5であった。

年齢,所得,うつ病の病歴及び家族歴,婚姻の有無,教育水準,社援助の有無を補正した後,うつ病の発症リスクはMA群がNA群比較し22%低いことが明らかとなった[ハザード比(HR): 0.78,95% 信頼区間(CI):0.63-0.95]。

霊的価値の重視(HR:0.88,95%CI:0.72-1.07)ならびに霊的人るという自覚(HR:1.14,95%CI:0.85-1.51)は,いずれうつ病発症を予防していなかった。

〈考察〉本研究により,宗教的儀式に月に1回以上参加していた者うつ発症のリスクが低いということが明らかになった。

MA群約1/2は組織に所属しており,集団での宗教儀式への参加により地域への帰属意識が強化され,社会的援助を受ける機会が増加することよって,

メンタルヘルスに好ましい影響を及ぼし,自己評価ならびに自尊心向上寄与している可能性が示唆される。一方,霊に関する意識うつ病発症予防的効果は見出されなかった。

– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)

引用元 ⇒ https://ds-pharma.jp/literature/psychoabstract/article/2013/10_05_18.html

 

宗教儀式への参加や祈りの効果

 

何故「霊的なものに関する意識の強化」には効果がなく、集団で教儀式への参加や祈りというものが効果を発揮したのか?というと、

 

このブログで再三書いてきましたが、オカルト原理主義的な方向性へ向かうならば、病的な自我の退行をむしろ加速させます。そして個人の孤立化 アトム化 や内閉化をあおる宗教の価値は低いわけです。

 

伝統的なその国の文化・民族・自然と調和している宗教の場合、上の記事にもあるように、帰属意識が生まれ、社会的援助を受ける機会増加し、自己評価ならびに自尊心の向上に寄与した、その結果、うつへの好ましい効果があったというわけです。

 

以前に記事で書いたように、本来の伝統宗教の自我保護の役割と「統合神」の働きというものは、ひとつはこういうものなんですね。「統合神」に関しては以下リンクより。

 

社会学からみた「宗教機能」 何が必要で何が害か?心の問題の今後の対策

 

そして「伝統的なその国の文化・民族・自然と調和している宗教」の場合、集合的無意識の力も強いので、そのパワーを借りることも出来る、ということですね。

 

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