無視される「都合の悪い原因」  精神治療薬の問題と脳・心の単純化の危険性  

 

今日は、精神治療薬の問題と脳・心の単純化の危険性をテーマに、「組織、そして利権屋や権力」などが絡む時、そこで無視される「都合の悪い原因」というものの中のひとつを見ていきましょう。

 

このテーマと関係が深い以下の記事も参考にどうそ。

〇  何故、精神科医や教育者は嫌われるのか? 治す側・教える側という公的な仮面
 グラクソ・スミス・クライン社の悪行
 いかに日本はうつ病を信じるようになったか
 発達障害を精神疾患だと誤診され、社会生活が不可能になる患者達

 

 

2018/3  追加更新 ー ここから ー

以下に紹介の記事も「」が原因となって生じていた「せん妄」が認知症の悪化とされて悪循環に陥っていた例です。

 

医師だからと言って専門家だからといって病院だからといって、適切に対応されるとは限らず、担当する医師や病院によってはむしろ余計に悪化させることも現実にあるわけです。

 

そして内田直樹先生の適切な判断によって興奮することが急激に減ったわけですが、「もしこの先生にめぐり合わなかったら」、というようなケースがまだまだ多いんですね、この分野は。

 

「交通事故の後遺症 せん妄状態の原因を絶つ」より引用抜粋

「処方されていた薬剤が原因だった」

せん妄状態では、自分がどこにいるのか、周囲にいる人が誰なのか、あるいは日付や季節などの時間に関する感覚が怪しくなります。

 せん妄は、認知機能が低下した時に別の要因が加わると、多く見られるようになります。

 たとえば、手術直後や、血圧が大きく変わったり心肺機能が弱ったりした時、感染症にかかったり、発熱や下痢や脱水状態にあったりすると起こります。

骨折したために歩けなかったり、拘束されたりして思うように体が動かせない状態にある、

または睡眠が足りない、飲酒や断酒などが重なる……などで発症する場合もあります。

また、急激な生活環境の変化や家族との離別や死別、経済的問題や孤立感に苦しむなど、環境面での問題も原因となります。

 中でも要因として多いのが、薬剤の影響です。胃薬(特にH2ブロッカー)、精神安定剤(抗不安薬、睡眠薬)、抗パーキンソン病薬、ステロイド剤などが原因として挙げられます。

 何年も続けて飲んできた薬が、ある日、せん妄状態を引き起こすこともあります。これは、加齢に伴って脳の機能が低下したことが原因と考えられます。

 気になって、以前の病院で処方されたというAさんの薬を確認すると、胃薬と睡眠薬がありました。

交通事故の後遺症で脳の機能が低下していたところに、胃薬や睡眠薬が誘因となり、せん妄が起きていたのでしょう。

服用をやめると、興奮することが急激に減りました。せん妄は、それを引き起こす要素を取り除くだけでよくなることが少なくありません。

 症状が出た時に、「認知症が進んでしまった」「状態が悪化した」などとあきらめず、医師も家族も、何か改善できる方法があるのではないかと考えることが重要です。(内田直樹 精神科医)

– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)

引用元⇒ 交通事故の後遺症 せん妄状態の原因を絶つ

追加更新 ー ここまで ー

 

ただこのように否定的なものを中心にピックアップすると、何だかすべての精神科医がいい加減に診断しているように感じるかもしれませんが、

 

確かに医師によって診断能力の個人差はあるでしょうし、中には全くズレた判断をする人とか悪い人もいるのでしょうが、それは内科でも外科でも他でも一定数は存在するでしょう。

 

「心・精神」というまだわからないことが多い複雑なものを扱っている分野であるということと、「診断が変わる」=「誤診」というほど単純な図式でもないわけです。⇒ 精神科医はどうやって診断しているのか(医師)

 

 

精神医学の問題の本質、それは「精神治療薬の使い方の問題」、そして「脳・心」の単純化の問題です。

 

例えば一人の人間が凶悪な犯罪者や心・精神の病になるには様々な原因・多角的な力学があるでしょう。それは社会・両親・職場・学校・地域・薬物・仲間・金銭・生活上の問題遺伝・病気など様々な複合的な作用・キッカケがあり多様性があるわけです。

 

それぞれの犯罪や心・精神の病によっても何がメインの動機なのか?ということは違っていたり似ていたりします。ですがその動機が形成された背景にある力学の中で都合が悪いものは無視され一部だけが集中的にクローズアップされるのです。

 

メディアにしても世間一般にしても警察にしても、一人の個人の「暴走行為」「脳・心」を単純化してパターン的に考える傾向があります。

 

それは仕事上の制限や仕組みの問題であったりもするでしょうし、あるいは限られた時間とエネルギーの中で物事を処理していく上では、その方が効率的な解決方法なのかもしれませんが、

 

そういう脳・心の単純化個人の単純化によって多くの見落しが生まれ、それはさらなる危険性・問題点を生み出していくのです。

 

私は精神科医が全て悪いとかそんな風には思いませんし、精神療薬精神科の治療が無意味で全く効果がないとは思ってはいません。

 

ですが、脳・心の単純化と個人の単純化によって多くの見落しが生まれてきたことは事実であり、それがどれだけ精神医療全体にとって都合が悪いことであっても、認めなくてはならない大事なことだと思います。

 

 

「精神科医の犯罪を問う」より引用抜粋

「銃乱射事件と向精神薬の関係」

米国での銃乱射事件:

1998年5月、オレゴン州スプリングフィールドで、15歳のキップ・ キンケルが、両親を殺害した後に自分の学校に行って銃を乱射し、 2人を殺害して22人に傷を負わせた。彼は抗うつ剤プロザックを 服用していた。 

1999年4月、コロラド州コロンバイン高校で、18歳のエリック・ハリスと17歳のディラン・クリーボールドが銃を乱射し、12人生徒と1人の教師を殺害し、23人に怪我を負わせ、その後自殺した。エリックは抗うつ剤ルボックスを服用していて、体内からの成分が検出された。ディランの情報は公開されていない。 

2005年3月、ミネソタ州レッドレイク高校で、16歳のジェフ・ワイズが銃を乱射し、学生や教師、警備員を殺害した後、自殺た。祖父母 を含めて合計9人を殺害した。彼は抗うつ剤プロザックを服用していた。 

2007年4月、バージニア州バージニア工科大学で、23歳のチョ・スンヒが銃を乱射し、32人を殺害した後、自殺した。アメリカ上最悪の銃乱射事件となった。彼は抗うつ剤を事件当日も服用していた。 

2007年12月、ネブラスカ州オマハの大型ショッピングモールで、19歳 のロバート・ホーキンスが銃乱射し、8人を殺害した後自殺しました。 この少年は、ADHDとうつ病と診断され、抗うつ剤プロザックを服用していた。

 日本での銃乱射事件:

2007年5月、愛知県長久手町で、大林久人被告が家に立てこもて発砲し、 警察官1人を殺害し、その他3人に怪我を負わせた。彼は、犯行時に 精神安定剤や睡眠導入剤を服用していた。

– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)

引用元⇒ http://blogs.yahoo.co.jp/kebichan55/38666650.html

 

他の凶悪事件と因果関係が疑われる向精神薬の例

 

2001年6月8日、日本で起きた池田小学校事件の犯人宅間守も精神病院へ通院しており、抗精神病薬「セロクエル」と抗鬱剤「パキシル」、睡眠剤「エバミール」を服用していた。逮捕直後に「薬を十回分飲んだ。しんどい」と供述して、医師の診察を受けたという 。

 

秋葉原通り魔事件加藤被告は当時、向精神薬を常用していたと言われています。

 

祇園暴走事故では 自宅から薬700錠が押収されたと報道あり。その他にも、以下のような「事件の犯人と向精神薬との関係性」の疑いがあります。

 

● 福岡男児殺害事件:パキシル、トリプタノール、ハルシオン、マイスリー、デパス

● 川崎男児投げ落とし事件:パキシル、レスリン、ドグマチール、トフラニール

● 京都塾講師小6女児刺殺事件:ルボックス、リスパダール、タスモリン

● ドン・キホーテ放火事件:パキシル

● 愛知県立てこもり発砲警察殺傷事件:アサシオン、ソラナックス

 

そして最近の事件でも、山口放火殺人事も精神科との関係がありました。

 

上の記事に出てくる向精神薬「ルボックス」や「パキシル」はSSRIのひとつですが、効果以外に副作用にも注意が必要とされる強力なSSRIです。

 

短絡的にこれらを全て薬と結びつけるわけではありませんが、以下にこのテーマに関連する精神科医による外部サイト記事を紹介しておきますね。興味深い内容です。

 

「CNS関連の遺伝子を事前に調べて有害事象を回避すべきか」
より引用抜粋

MAOAが低活性(MAO阻害剤を内服していることと同じ状態にある)となる遺伝子型を有する患者さんに、SSRIを投与することは絶対禁忌なことをしていることと等しいようにも思えるのであった。

なぜならば、MAOA活性は切れやすさに関係しているからである。もし、MAOAが低活性の人がSSRIを飲めば、さらに切れやすくなってしまうおそれがあるのである。
– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)

引用元⇒ CNS関連の遺伝子を事前に調べて有害事象を回避すべきか

 

 

2016年11月16日  ヨミドクター より - 【追加更新】

薬への耐性と依存、服用量増加

ベンゾジアゼピン系などの睡眠薬や抗不安薬を長期間服用すると、効果が薄れる「耐性」や、薬を減らすと心身の不調が起こる「依存」を招きやすい。

こうした副作用で服薬量が増えると、泥酔時と似た「脱抑制」の状態に陥り、思わぬ行動に出る恐れがある。
(中略)
全国的な統計調査はないが、向精神薬の影響で異常な行動を繰り返す患者は少なくないとみられる。

 窃盗で何度も逮捕された後、赤城高原ホスピタル(群馬県渋川市)に入院し、薬を少しずつ減らす方法で断薬した40歳代の女性は

「入院患者同士のミーティングなどで、薬に安易に頼った自分の弱さを見詰め直せた。人生をやり直したい」と語った。

 同病院の院長、竹村道夫さんは「窃盗や暴力などの異常な行動は、抗うつ薬でも起こる。

向精神薬で注意力が低下すると、車の運転にも支障が出かねない。医師、患者双方が、もっと慎重な薬の使用を心がけてほしい」と呼びかけている。

引用元 ⇒ 向精神薬の副作用…万引き何度も 覚えがない

 

◇ SSRIの副作用に関する関連外部サイトの紹介

SSRIの副作用、アクチベーションシンドローム(賦活症候群)って何?

 

 

精神治療薬が投与されてなくても心・精神の病気には変わりない

2018/4 追加更新- ここから

学者にせよ権威にせよ、自身の主張する科学的エビデンスにおいて有利になるエビデンスや情報は話しても、

 

そのエビデンスを否定するデータや情報=「不利なエビデンスや」は積極的に示さない傾向性を有します。科学=科学者ではない、ということです。専門家=事実判断ではないのと同じく。

 

科学者にも専門家にも価値判断への偏りは生じます。経験知や科学的な姿勢も相対的で個人差があります。「エビデンスの通りにはいかない、あるいはそれと逆のことが生じる」などのエビデンスとの不整合性の指摘やアンチテーゼは、

 

「一部の当事者」「一部の科学者・専門家」だけに限った主張なのでなく、現場で臨床を行う医師や専門家でも経験知として少なからず持っているものであり、ある特定の実験データのエビデンスにそぐわないからといって直ちに否定されるようなものではないんですね。

 

経験的事実や現実における大小の違和感やズレや問題点を、己の立場による「不利、有利」に関わらずに慎重に見ていく姿勢は必要でしょう。

 

専門家や権威の価値判断やそれに有利なエビデンスだけではなく、多角的な事実判断、当事者及び現実・現場での実際の現象・状況に重きを置く、

 

そのように多元的な現実と事実判断の中で再検討していく姿勢でなければ、科学的にはまだ全然曖昧で未熟なこの分野が、より改善され発展していくという建設的な流れは停滞し、

 

逆に支配的で権威的な姿勢で都合の悪いものに蓋をし、問を残したままで自らを優位に置こうとし続ける、というのであれば、政治や企業や大学と変わらない負の体質を維持していくでしょう。

 

以下の記事は精、神医学的な「断定」「否定」から入らない科学的な事実の検証への慎重さが感じられますので、ここで紹介することにしますね。

 

脳科学辞典 -「攻撃性」 より引用抜粋

黒田 公美
独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター
高橋 阿貴
筑波大学 人間系
DOI:10.14931/bsd.7617 原稿受付日:2018年3月14日 原稿完成
日:2018年4月12日
担当編集委員:加藤 忠史(理化学研究所 脳科学総合研究センター)

 

「セロトニンと攻撃性」

 攻撃行動に関わる神経伝達物質として最もよく研究されているのが、セロトニン(5-HT)である。

衝動的・暴力的な行動を示す個体において、血中や脳内のセロトニンが低下していることが様々な動物において観察されたことから、セロトニンが欠損すると攻撃性が昂進するという仮説が一般的に広く受け入れられているが、

実はそう単純な関係ではないことが徐々に認識されてきている[2
8][29]。

 実際、セロトニン合成(トリプトファン水酸化酵素2 (tryptophan hydroxylase 2; Tph2)や、セロトニン神経発達に関わる遺伝子(Pet-1)を欠損させたり、

5-HT1B受容体を欠損させたノックアウトマウスにおいて、攻撃行動が多くみられることは、セロトニン系の阻害が攻撃行動を昂進させることを示している[30][31][32]。

その一方で、モノアミン酸化酵素MAOAが欠損したヒトやマウスにおいて、過剰な攻撃性が観察され、それらの個体ではセロトニン量が増加している[33][34]。

また、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は攻撃行動を減らすという報告と増加させるという報告が混在している[35][3
6]。

このことから、セロトニンは受容体のサブタイプや、作用する脳部位によって、攻撃行動に異なる作用をもたらしており、

更に攻撃行動のタイプ(offensive, defensive, 母親攻撃行動など)や、攻撃の特性(trait)と状態(state)によっても、セロトニンと攻撃行動の関係は異なる可能性が示唆されている。
– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)

引用元⇒ 攻撃性

追加更新- ここまで

 

 

私がここで言いたいことは、無視される「都合の悪い原因」であって、重大事件を引きおこした人達が「マトモな状態であったのに薬の力だけで狂人にさせられた」などという極論を言いたいわけではありません。

 

それなら向精神薬を飲んだ膨大な数の人々が日本・世界にはいるわけですから、もっと多くの人が狂人になっているはずです。

 

またそもそも最初に精神科へ行く、あるいは連れていかれる理由があり、そこには既に何らかの異常な問題行動や心・精神の過度な不調などがあったからであって、

 

心・精神の状態が健康で問題のない人は精神科には行きません。つまり「精神科に行く以前」に「何かの異常・問題」が先行して存在していたわけです。

 

その「何かの異常・問題」への判断や対処の仕方に不十分なもの・見落とされたものがある、という可能性も慎重に考慮しておいた方が良い、という意味であって、「何もかも精神科及び薬物が生み出した・全部それが原因」ということではありません。

 

「全ての人が向精神薬を飲んだり精神科に行けば心・精神は悪化する」というようなことはあまりにも極論過ぎるでしょう。

 

また「治療が杜撰で酷い病院」も確かにあり、悪質な精神科医も確かに一部はいるし、医師や医療関係者などによる犯罪事件なども実際に起きていますが、精神医学は昔よりマイナス部分が改善され進歩しているのもまた事実なのです。

 

ですが、彼らがそのような暴走を起こす前にもっと適切な治療・対応がとられていれば、あそこまで酷い結果にならずに済んだ可能性も少しはあったのでは?と思います。

 

 

デイビッド・アンダーソン:

あなたの脳はただの化学物質の袋ではない

現代の精神治療薬は脳全体に影響を与えてしまいます。しかし経生物学者のデイビッド・アンダーソンは脳がどのように機能するかという微妙な差異に着目しました。

今日彼が発表するのは、効果が高く、そして副作用も回避でき精神病の投薬治療法へとつながる新しい研究結果です。彼は何をしたのか?まず、大量のハエを怒らせるところから始めました。

 

 

 

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