強迫性障害・不安障害と治療 (脳・神経学・精神分析学・心理学・精神医学 )  

 

今回は強迫性障害の脳・神経学的な角度と精神分析学・心理学による考察の記事です。

 

近年、「強迫性障害」も生物学的要因も重視するようになってきています。そして強迫性障害は人種、国籍、性別に無関係に発症し、動物にも発症します。まず脳科学的にはどのような構造性が考えられるのか?

 

以下は「洗浄強迫、「確認強迫の脳科学的な構造図ですが、ループの大元は同じでも、細かく見れば関与すると考えられる脳領域がそれぞれに異なる部分もあるわけですね。

 

図:引用元 ⇒ OCD の生物学的病態からみた難治性

 

そして最近の脳科学的な研究結果の記事もひとつ紹介しておきます。

 

「東京医科歯科大、自閉症・強迫症などが発症する仕組み解明 -グリア細胞機能が異常に」 より引用抜粋

東京医科歯科大学難治疾患研究所の田中光一教授や相田知海助教らは、自閉症や不安な気持ちが続く強迫症などを発症する仕組みを解明した。

脳内で情報処理や免疫反応などに関わる「グリア細胞」の機能が異常になると、脱毛や皮膚傷害になるほど毛繕い行動を頻繁に繰り返すことをマウスでの実験で明らかにした。
– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)

引用元⇒ 東京医科歯科大、自閉症・強迫症などが発症する仕組み解-グリア細胞機能が異常に

 

◇ 関連PDF/関連外部記事の紹介

 [PDF]強迫スペクトラム障害の展望
 脳内免疫細胞が社会的行動の形成を助ける
  衝動性と強迫性〜摂食 障害との関係
  強迫性障害における脳画像研究と生物学的病態仮説

 

そして今年、脳内には存在しないと言われていた「リンパ管」が発見される、という歴史を覆すレベルの凄い研究結果が報告されましたが、

 

本当に脳にリンパ管があるのであれば、脳内における免疫系のバランスにも当然密接に関連し、脳内の活動に大きな影響を及ぼしていることも考えられますね。

 

この発見により、脳のリンパ管とその働きと機能が明確に具体的に分析されることで、様々な脳内現象の解明の可能性が広がることが期待されます。 神経免疫学: 脳のリンパ管系

 

著名な精神病理学者の笠原氏によれば、「強迫症」は「人生における不確実性、測不能性、曖昧性に対する防衛」であり、そこから生じる不安に対して、

 

「単純明快な生活信条、狭隘化した生活様式を設定して、確実で予測可能な世界を構築できるという空想的万能感を抱いている」ことだと分析していますが、

 

これも背景に「免疫系の脆弱さ、機能不全やバランス異常」があるから脳内反応が過敏化し、その結果、「不確実性」=「生の不安定性」の「予期不安」が生じやすくなる傾向、なのかもしれません。

 

ですが強迫症状はストレスにより悪化する傾向にあり、その発症及び改善のどちらにおいても心理社会的要因が大きく関わっているので、生物学的要因だけを見るのではなく、複合的要因との相互作用から考える視野が必要だと思いますね。

 

ではここで、対称性整頓癖(強迫性障害の一種)であるクリスティーナ・アギレラの曲を紹介しますね。

 

クリスティーナ・アギレラは声の伸びが素晴らしい、歌唱力のある実力派シンガーですが、この曲は歌詞がとても良いのです。日本語歌詞は以下紹介のリンク先にてご覧になれます♪

 The Voice Within – Christina Aguilera 洋楽歌詞和訳サイト

 

 

強迫性障害・不安障害と治療

 

以下は前回の記事からの引用です。『 自我の統合状態が崩れ、内的な主観として感じられる自己のアンバランス化、例えば暴走化した扁桃体の反応や、帯状回の興奮によって過敏化した恐怖対象に対する過剰防衛、あるいは攻撃性が発現する。』

 

上記の「過剰防衛、あるいは攻撃性が発現」という表現に関してですが、例えば世間では安易に精神障害の「攻撃性」のみがピックアップされることがよくあり、

 

スグに犯罪や暴力と結びつけられがちですが、研究では、暴力に向かう精神障害者の場合でも「自分自身を傷つける割合」の方が11倍も高いんですね。精神障害は自殺に深く関連する要因でもあります。

 

自殺に最も深く関連するものは「うつ」ですが、例えば「不安障害」の中では、パニック障害、次に強迫性障害がもっとも自殺に関連していると言われています。

 

そして、暴力とかそういうものとは全く関係のない症状も色々とあるわけです。

 

しかも、社交不安障害の人は思考能力・IQが高い傾向があるだけでなく、社会性が高く「感情移入能力・他者心理の理解能力」が共に高い人がなりやすい、という研究結果もあります。

 

その場合は「思考能力・IQが高いHSP系の人」がなりやすい傾向が考えられ、また「過剰適応」、そして「場」や「人」の相性による、が大きいと考えられます。「性質と環境との組み合わせ」ですね。

 

◇ 「不安障害」関連外部サイト・記事の紹介

侮れない!大人の人見知り

社会不安障害と向き合う

 

 

「抗うつ薬が効かない社交不安症(対人恐怖)を認知行動療法が改善~」より引用抜粋

宮崎大学 吉永尚紀 講師と 千葉大学 清水栄司 教授らの研究グループは、抗うつ薬で改善しない社交不安症患者(の7 -8割と想定される)に対して、認知行動療法が有効であ ることを臨床試験により明らかしまた( 85.7 %が改善、 47. 6%が寛解[症状ほぼ消失])。

成果 は、欧州医学雑誌のPsychotherapy and Psychosomatics誌に5月27日付(日本時間)でオンライ速報版が掲載されました 。– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)

引用元⇒ http://www.miyazaki-u.ac.jp/public/files/20160607-1.pdf

 

 

OCD研究会は、国内の強迫症/強迫性障害(OCD)に関する疫学調査、病態の検討、成因の研究、治療薬の効果などを通してOCDに対する治療法の確立、またこれらの研究を通して得られる成績をもって発活動を行うことを目的とします。

 OCD研究会「小さなことが気になるあなたへ」

 

 

別の角度から分析した研究報告の記事をもうひとつ紹介しておきます。

 

「強迫行為と想像過剰」2015年8月13日 サイエンスデイリー」 より引用抜粋

この研究では、強迫行為の特徴には、想像過剰による現実認識の混乱と、現実からの乖離の2つがあるとしている。

「強迫行為の一般的診断基準に専門家は賛成するが、強迫行為を起こすメカニズムについては未だ分かっていない」と、モントリオール大学の”強迫行為とチック研究所”のフレデリック・アーデマ所長は言う。

2011年の時点で、既に想像の度合いが激しい人、現実から乖離する傾向の強い人が強迫行為を起こしやすいのが分かっていた。今回の研究はこの事実を一般の強迫行為の患者で再確認することであった。

「強迫行為の理論では、強迫行為は、必ずしも浮かび上がった考えで生じるのではなくて、その考えがどのように判断されるかによって起きると説明している。

普通の人はおかしな考えが浮かんでも、現実性がないと判断して打ち消すが、強迫行為の患者では、打ち消すなら、打ち消す理由を聞きたいとなってしまう」とアーデマ所長は言う。
– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)

引用元⇒ 強迫行為と想像過剰

 

上の記事に出て来る「現実からの乖離、想像過剰」という部分、これもまたひとつのファクターでしょう。これは体験的そして感性的に納得できる部分があります。

 

では話を戻しますね。特定の対象・現象に対して通常の健全なバランス状態で自然反応が生じるのではなく、極端にバランス異常化した思考・感情と結びついた形で過剰な条件反応が引き起こされ、それがループ化するような場合、

 

マインドフルネス瞑想呼吸法などによって「前頭前野を活性化しつつ自律神経のバランスをとりながら、辺縁系の興奮を落ち着かせる」、そして大脳基底核の誤作動を修復する、

 

それがある程度安定してきたら、武道楽器演奏などもやってみてもよいとは思います。(前頭前野を活性化させる効果として。) ですがこういうものは「補足的なもの」とお考え下さい。

 

苦痛を感じながら無理にするようなものではありませんし、あくまでも医学的な治療を中心に医師の指示のもとに行った方が安全でしょう。

 

以前に紹介した「認知行動療法」の講義動画も再度紹介しておきます。 2016年4月~「認知行動療法」が保険適用へ!

 

認知行動療法の基礎と展開1~12

1~12までの講義動画が下記リンク先にてご覧になれます。いずれも一時間弱ある長時間動画なので、時間がある時にでもゆっくりご覧ください。

熊野宏昭 (くまの ひろあき)熊野宏昭プロフィール
早稲田大学人間科学学術院教授、 早稲田大学応用脳科学研究所所長に着任。 日本行動療法学会理事長、日本不安障害学会理事、日本心身医学会評議員⇒ 認知行動療法講義 HP




第1回「オリエンテーション」
第2回「認知行動療法の多様性」
第3回「レスポンデント学習と行動療法」第4回「オペラント学習と行動療法」
第5回「情報処理理論と認知療法」第6回「新世代の認知行動療法」
第7回「マインドフルネス認知療法」第8回「メタ認知療法」
第9回「神経行動療法への展開」第10回「臨床行動分析と行動活性化療法」
第11回「言語行動と関係フレーム理論」第12回「アクセプタンス&コミットメント・セ­ラピー」

 

さらにメンタルの安定化の補足として、「高次の防衛機制」によって対人関係による外的な干渉を受ける状況下でも調和的な統合状態をバランス化させ、ストレスを受けても退行しづらい自己同一性を形成していくことで、

 

自己肯定感と自他境界もシッカリし、様々な人々と関わる普段の日常において、適切な距離感で互いに自立した関係バランスを維持することが出来るようになるということです。

 

それを「短期的」にではなく「長期的に行う」ことで、アンバランス化した機能の異常を修復し、その健全な恒常性をシッカリと日々安定化させるわけですね。

 

精神障害は、年齢、男女差、人種、職業、宗教、を問わず、また社会的なポジションの優劣、経済的レベルの優劣、民族的な背景、思想・哲学や文系・理系を問わず発生するものです。

 

そして分析調査によれば、精神疾患の人が犯罪者化する確率よりも、むしろ一般人や犯罪者などからの暴力の犠牲者になる確率の方が高いんですね。

 

そして精神障害をもつ人が犯罪者化する場合も、虐待やイジメや排斥と孤独による障害悪化の結果による二次障害であることも多いんです。

 

自律神経・不安・強迫を自分で治す

 

以下は精神科医 心療内科医 廣瀬久益 氏によるDr.講話の紹介です。「自律神経の不調を自分で治す」、「強迫性障害」などの参考動画の紹介です。

 

◇ 自律神経の不調を自分で治す-メリハリを効かす-

 

 

◇ 強迫性障害(1/3)

強迫性障害(2/3)  ⇒ 強迫性障害(3/3)

 

 

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