記憶体験の遺伝 トラウマと統合失調症・うつ・薬に関するニュース
今日は「記憶体験の遺伝」トラウマ と統合失調症・うつ・薬に関する5つのニュースの紹介です。
以前の科学的な常識では、先天的・身体的な「気質」や「形質」の遺伝だけでなく、「経験・記憶も遺伝する」というのは一般的なものではありませんでしたが、最近の科学研究では、徐々にその一部が明らかになってきているようです。
私は「潜在意識・無意識領域に根付いた記憶体験は、正負を問わず、様々な形で子孫に伝承される」と考えていますが、今明らかになりつつあるのは「恐怖・ショック・繰り返された否定的記憶・体験」つまり負の要素の遺伝がメインです。
その一部は、一般にトラウマと言われます。ここで、海外の研究報告の記事を紹介します。この記事で出てくるトローマ(trauma)という言葉はトラウマの意味です。
「心的外傷は遺伝する」 より引用抜粋
2014年4月13日 サイエンスデイリーよりチューリッヒ工科大学発表 April 13, 2014(前略)
「躁鬱病と言う病気がありますが、この病気は家族間に発症しているのが分かっている。
(中略)
マンスイ等は、この病気を引き起こす重要なヒントを短いRNAの分子に発見した。
(中略)
研究では、子供の時にトローマを経験したネズミの細胞に現れたマイクロRNAの種類と数を調べ、それをトローマを経験しなかったネズミと比較した。結果はトローマを受けたネズミでは、マイクロRNAの数が変化していた。
(中略)
この変化は当然、細胞活動に影響を与える。トローマを経験したネズミは行動に変化が生じ、例えば、普段は開けた場所を嫌うネズミがあまり嫌わなくなるとか、人間の鬱状態のような症状を呈するネズミも現れた。この行動の変化は一世代の変化にとどまらず、次の世代に、あるいは孫の世代まで受け継がれた。
(中略)
「我々は初めて、トローマが代謝に影響を与え、それが子孫にまで及ぶのを知った。トローマが遺伝するのは、精子の中のマイクロRNAのバランスが変化するからです。この混乱がどのような原因によって起きるのかは、恐らく、体がストレスホルモンを多量に分泌するために、生体内で連鎖反応が起こり、
それがマイクロRNAのバランスにまで影響したと解釈します」とマンスイは言う。重要なのは、トローマばかりでなく、経験により獲得した性質も同様のメカニズムで遺伝すると専門家は考えていることだ。
「環境は脳に影響を与え、臓器にも生殖体にも影響をあたえ、次世代に遺伝する」とマンスイは言う。– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)
引用元⇒ 心的外傷は遺伝する
次に紹介の記事も「遺伝」に関するニュースですが、心の病が思春期に多く起こる原因として、「脳皮質の厚さ」の変化が遺伝子に影響される、という内容のものです。
「思春期に発症する心の病 アメリカ国立精神衛生研究所 科学ニュース 2014年5月20日」より引用抜粋
アメリカ国立精神衛生研究所の発表によると、脳の外側を覆う脳皮質の厚さは、 子供から思春期に至る過程で遺伝子の影響を受けることが分かった。
脳皮質は進化の過程でより後期に獲得した部分であり、人間の脳の成長でもより遅く成 長する部分でもある。
「皮質の厚さの変化は遺伝に影響され、子供の後期から思春期に現れる。特に人間に特有な言語に関するエリアと、思考に関するエリアが遺伝に影響される。
この脳は心の病にも関係していて、心の病の多くは思春期に現れるのに一致する。
我々の研究は、遺伝と環境と年齢の相互関係を明らかにしている」とアメリカ国 立精神衛生研究所のジェイ・ギード研究官は言う。– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)
引用元⇒ 思春期に発症する心の病
「うつ」に関連する以下の記事も紹介しておきます。この記事は喫煙者が対象です。禁煙がなかなか出来ない、という気持ちはよくわかりますが、殆ど運動をしないに加えて「食生活・睡眠が偏っていてさらに喫煙者である」場合、これは相当に顕著に現れます。
適度な運動、バランスの良い食事と睡眠、それに禁煙効果を加えるのなら、心身へのハッキリとした良い効果を感じることが出来るでしょう。
「禁煙は抗うつ剤より精神の安定に効果的 2014年02月17日 15:58 発信地:パリ/フランスより引用抜粋
【2月17日 AFP】 禁煙に成功した人は、不安やストレスを感じている人が抗うつ剤を服用したのと同じぐらい、精神的な安定を感じることができる──13日の英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal、BMJ)で発表された。
(中略)
対象となった喫煙者たちの平均年齢は44歳で、たばこを1日10本から40本吸う人たち。対象者たちは禁煙をする前と禁煙を始めて平均6か月の2回、質問に回答した。禁煙に成功した人たちは挫折した人たちに比べて、不安感や気持ちの落ち込み、ストレスが減り、将来に対してより楽観的になったと回答した。
BMJに掲載された報告によると、「その効果は抗うつ治療を受けたのと同じぐらい、あるいはそれ以上である」という。また、精神疾患がある人で禁煙に成功した人も同様の効果を得ることができるという。– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)
引用元⇒ 禁煙は抗うつ剤より精神の安定に効果的
◇ 「喫煙と肺癌」に関する最新ニュースの紹介(2016/11 追加更新)
○ 肺がん たばこで遺伝子の突然変異が大量に
○ 受動喫煙による日本人の肺がんリスク約1.3倍 肺がんリスク
評価「ほぼ確実」から「確実」へ
現代生活では慢性化しているよくある生活パターンへの注意点として、以下の記事も参考にどうぞ。
◇ 救命医が危機感を抱く!若い女性に多い「命を縮める」生活習慣4つ
■1:コンビニ飯が多い
■2:脂質の摂りすぎ
■3:水分不足
<1日に必要な水分量の目安(ml)=35ml×体重(kg)> (例)体重40㌔の人は毎日1.4㍑
■4:喫煙詳細はコチラより ⇒ 救命医が危機感を抱く!若い女性に多い「命を縮める」生活習慣4つ
向精神薬に関するニュース
今年になって新たに問題化した「統合失調症薬」に関するニュースと「向精神薬」の規制に関するニュースを紹介します。
「統合失調症薬で21人死亡 ヤンセンのゼプリオン」 より引用抜粋
2014年04月18日00時25分
厚生労働省は17日、統合失調症治療薬「ゼプリオン水懸筋注」(ヤンセンファーマ社)を使用していた21人が死亡したと発表した。
因果関係はわかっていないが、厚労省は同社に対し、使用上の注意を改訂し、医療関係者らに注意を呼びかけるよう指示した。
厚労省と同社によると、「ゼプリオン水懸筋注」は昨年11月に販売を始め、使用した患者は推定約1万900人という。
死亡例のうち、詳しい情報が公開された14例の死因は心筋梗塞(こうそく)や多臓器不全、肺炎などで、半数はわからなかった。12例はほかの抗精神病薬と併用していた。
使用してから死亡するまでの期間は3~107日だった。同社は、抗精神病薬との併用を控え、ほかの薬から切り替える際には用法・用量を守るなどの注意を呼びかけている。
84の国と地域で承認されているが、発売から短期間の死亡例は報告されていないという。
– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)
引用元⇒ http://www.asahi.com/articles/ASG4K5H2GG4KULBJ00T.html
当ブログでは、鬱に関する精神医学アプローチ、臨床心理学的アプローチ、東洋医学的アプローチ、他のアプローチなど、自他の体験と、医師・カウンセラー・他専門家の動画や記事・外部サイトの紹介を含めて、様々な角度からの総合的なコンテンツを日々目指している最中ですが、
カテゴリー数も多いサイトなので、まだまだ時間がかかる作業です。「薬」に関しては肯定的な側面と否定的な側面のどちらもを過去に書いています。これは精神医学そのものに対しての期待や疑問も同じです。
以下の二つの記事は、2014年度に各種メディアで報道された、「向精神薬の多剤処方の規制」に関する記事です。最初の記事は、向精神薬の否定的側面を指摘しています。
向精神薬の副作用には個人差があること、また薬への依存や、精神医学への過度な信頼や、「精神医学的概念のみでの人や病気の分析」では見落とされるものがあり、不十分であるという意味の記事も過去に複数書きました。
「日経メディカル」 より引用抜粋
「NEWS◎2014年度診療報酬改定 向精神薬の多剤処方は厳しく規制へ 2014/2/18 土田絢子=日経メディカル」
日本精神神経学会も、薬剤数のみで「通院・在宅精神療法」を減算する案に医学的根拠はないとして反対意見を表明していた。結局、処方料や処方箋料などで減算する方針に落ち着いた形だ。
日本では、向精神薬の多剤併用・大量投与が様々な問題を引き起こしてきた。睡眠薬や抗不安薬などのベンゾジアゼピン系薬は不適切な頻回使用により薬物依存を生みやすい。
さらに患者が溜め込んだ向精神薬を過量服薬すると、衝動性が高まって自殺につながりやすくなる。
また抗精神病薬は、600mg/日(クロルプロマジン換算)程度で治療効果が頭打ちになるのに対し、それ以上投与すると錐体外路系副作用のリスクが増大することが分かっている。
– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)
引用元⇒ href=”https://medical.nikkeibp.co.jp/LGNF0010.action
次に紹介の記事は、「向精神薬の多剤処方の規制」のニュース報道に関する間違いの部分を指摘した記事です。
精神医学関連でこういう規制系のニュースが出ると、ワーッと「向精神薬全否定」のような内容の記事がアチコチでネットでは乱立しますね。まぁ私も「薬を使わないで治せるならそれにこしたことはない」と思うタイプではありますが、全否定はしていません。
「向精神薬の処方制限についての解説 井出草平 | 社会学者。博士(人間科学)。 2014年3月11日20時44分」より引用抜粋
「向精神薬の大量処方を制限へ、診療報酬を認めず 」
読売新聞で向精神薬の大量処方を制限するという報道があったが、正確ではないので整理しておきたい。 読売新聞では「抗不安薬や睡眠薬などの向精神薬を数多く処方した場合、診療報酬を原則認めない仕組み」と書いてあるが、これは間違いである。
今回の改定は、所定の種類以上の向精神薬を処方した場合に、病院・クリニック・薬局の収入が減額されるようにペナルティが課されるというものだ。
患者側が抗不安薬や睡眠薬などを何種類も求めても、病院・クリニック・薬局側は収入が減るため、医師は患者の要求することを断るためのインセンティブが設けられたのである。
ただ、治療に必要がありこの規定以上の種類の薬を処方した場合には、病院・クリニック・薬局側が減算分をかぶるということも起こりうる。
(中略)
経過措置として半年間猶予があり、実際に導入されるのは平成26年10月1日からである。また、他院で多剤処方された患者が受診した場合の一定期間、薬剤を切り替える際の一定期間等は除外とされている。例えば、抗うつ薬を切り替える際には元の薬の量を減らして、新しい薬の量を徐々に上げる方法(クロステーパー)が推奨されているものもある*4。
このような場合は除外規定に該当し、薬種が増えても減算が適用されることはない。厚生労働省のいう抗不安薬はベンゾジアゼピン系の薬剤がほとんどである。
ただし、クロナゼパム(リボトリール・ランドセン)は抗不安薬には入っていない*5。また、ベンゾジアゼピン系ではないタンドスピロン(セディール)は抗不安薬に入っている*6。
– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)
引用元⇒ http://d.hatena.ne.jp/iDES/20140311/1394537575