薬物依存 治療と対応 「危険ドラッグ」の精神破壊作用

 

今回は「薬物依存」のテーマをシンプルに書いています。これは昨年書く予定だったのですが、他のカテゴリー記事の更新や作業時間の都合などで、下書き状態のまま編集が遅れていました。

 

「薬物依存」、そして近年深刻な「危険ドラッグ」はニュースなどでも連日報道されていましたので、「危険ドラッグ」の破壊作用は今更言うまでもないのですが、

 

「危険ドラッグ」はコントロール不能な変性意識を生み出し、心・精神を瞬時にカオ化・退行化・解離化・統合失調症化・凶暴化してしまう恐るべき急性作用をもたらすもので、

 

強力な精神分裂状態を現象化させる危険な薬物であり、人としての意識を破壊し、しかも強い依存性がありますので、手を出さないように気を付けましょう。

 

ではまず、「危険ドラッグ」に関するニュースの動画を紹介します。

 

「危険ドラッグ」 摘発者5倍、840人 過去最多に・・・(15/03/05)

[深掘り!]危険ドラッグに潜む「危険」

 

次は、2012に起きた凄惨な猟奇的事件「人の顔面を食べた男」として世界を驚かせた「マイアミゾンビ事件」の犯人が、後に「脱法ドラッグ」を大量服用していたことが判明しました。(※ 正確には食べたわけではなく、顔面を噛みちぎった。

 

※ この事件は当初、「犯人はマリファナを使用していた」とメディアで報道していたが後に犯人は脱法ドラッ一種であるバスソルトを服用していたとの検査結果が出る。以下に紹介の動画は当時の海外ニュース映像
です。 マイアミゾンビ事件(Wikipedia)

 

バスソルトとは世界的な隠語で、粉末状の脱法ドラッグ

 

脱法ドラッグ(危険ドラッグ)が規制されると、その規制を逃れるために薬物の化学式の一部を変えた新しい薬がすぐに製造され、そのイタチごっこが続いているわけですが、化学式が変更されることによって、

 

どのような「精神への負の作用・脳への悪影響」を及ぼすかが全く予測不能な、突然変異型の強力な薬が生み出されてしまう危険性があります。その結果、脳のリミッターが外れ、強烈な「認知的脱抑制」状態で記憶も理性も吹っ飛んだまま常人の数倍の力で暴れたりするわけです。

 

具体的な症例・事件例などの参考として、以下に二つのサイト記事を引用紹介しますね。

 

「神奈川県警 危険ドラッグは「ダメ。ゼッタイ。」より引用抜粋

(前略)

体調異変

 路上駐車の車両内で吐しゃ物にまみれて寝ていた。
● 全身大便まみれで路上に倒れ、うめいたり叫んだりしていた。
● へらへら笑った後、路上に倒れ意識がなくなった。
● 暴れながらおう吐し続けた。
●「うー」とうなった後、口から泡を吹いて倒れていたが、その後「殺すぞ」と言って暴れだした。
● 突然、けいれん、おう吐を繰り返し、錯乱状態となった。
エレベータの壁に顔面から前のめりに倒れ、意識不明の状態で発見された。

幻覚・幻聴・妄想等の精神症状

パンツ1枚の格好で大声を出して路上を走り回り「電磁波が飛んでいる。
テスターを持って来てくれ。隔離してくれ。」など意味不明なことを叫び暴れた。
● 全裸でマンションエントランスで暴れて110番通報された。
●「やくざに追われている」などと言って警察に助けを求めてきた。
●「カーナビを設定すると警察に行くようにしか設定できない」と言って110番通報してきた。
●「マンション6階の自分の部屋に知らない人が入ってきた」と言ってベランダ伝いに隣家に助けを求めた。
●「あいつ危険ドラッグやってるぜ」などという幻聴が聞こえた。
● 「駅に行こうとして走ったがいくら走っても駅に着かない」と110番通報してきた。
● 「時計とエアコンが私を殺すと言っている」と言って助けを求めてきた。
● 漫画喫茶で下半身裸の状態で、「床の隙間から男が入ってきた。助けてくれ。」と叫び大騒ぎした。
●「足にダニが入ってくる。」と言って暴れた。
●「神のお告げがあった。」などと言い出した。
● 吐き気をもよおし、その後ビルの屋上から飛び降りたくなった。
●「大きなものが身体の中に入って来て押さえきれない。足が痛い。」などと言って暴れた。
● 「壁の中からドンドンと音がする。壁の中で人が死んでいる。」などと言って壁にドライバーを突き刺した。
● 意識もうろうとした状態で電柱にしがみついていた。

– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)

引用元⇒ 神奈川県警 危険ドラッグは「ダメ。ゼッタイ。」

 

 

上の記事内容はまるで統合失調症の幻覚症状のような状態ですが、以下の記事はそれ以上に深刻なもの・強烈な内容を含んでいます。

 

そして上の記事のような「刑事司法」の「絶対ダメダメ」という考え方というのは、医療・福祉の考え方とは質的に異なる部分があります。

 

「薬物依存症は病気である」という視点、そして「自己治療仮説」に見られる「そもそも何故人は依存症になるのか?」という無意識的な過程、依存症の問題を本当に解決していきたいのであれば、この臨床的な視点が必要だと思いますね。本を一冊紹介します。

 

 人はなぜ依存症になるのか 自己治療としてのアディクション

 

臨床的な視点は「ハームリダクション」の考え方が基本なんですね。「ハームリダクション」とはどういうものか? その概念をコンパクトにわかりやすくまとめた参考PDFからの引用です。

 

「ハームリダクションの考え方とは」 より引用抜粋

~人権を尊重した支援~
わが国は,薬物問題に「ダメ.ゼッタイ.」に象徴される「不寛容・厳罰主義」を一貫して進めてきた,先進国では稀有な国である.これらは,「薬物依存症は病気」とする視点とは対極にある.

臨床的には,「不寛容・厳罰主義」では治療にならないどころか,「反治療的」である.さらには,偏見や人権侵害を助長し,スティグマを強化する可能性がある.

薬物依存症の治療・回復支援を考えた場合,ハームリダクションの考え方は,「当たり前のこと」である.そもそも「不寛容・厳罰主義」は刑事司法の考え方であり,医療・福祉の考え方ではない.

世界の先進国もかつては厳罰主義で対応していた.しかし,それではうまくいかなかった反省に立って,大きく方向転換をしてきた.それが米国を中心としたドラッグコートであり,欧州を中心としたハームリダクションである.– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)

引用元⇒ ハームリダクションの考え方とは

 

治療する側の視点、問題を解決するために逆効果な「厳罰主義」と「不寛容」、これ等は押さえておきたい大事な部分ですね。

 

「薬物依存Substance Dependence」 より引用抜粋

<近年発生した危険ドラッグ(脱法ハーブ)の事件・事故、精神症状>

● 危険ドラッグを吸った男が自動車を運転し,女子高生1人をはねて死亡させた(愛知県)
● 危険ドラッグを吸った男が自動車を運転し,女児1人をはねて死亡させた(香川県)
● 危険ドラッグを吸った女が意識不明の状態で見つかり,その後死亡した(愛知県)
● 危険ドラッグを吸った男が自動車を運転し,歩行者に激突。1人が死亡,7人が負傷した(東京都)
● 危険ドラッグを所持していた男が奇行を繰り返した末に,ビルの屋上から飛び降り死亡した(東京都)
● 危険ドラッグを吸った男が自動車を運転し,電柱に衝突,運転をしていた男が死亡した(東京都)
● 上半身裸の男が小学校に乱入して小学生を追い掛け回した
3階の自分の部屋から飛び降りて、下半身裸になり付近の塀やフェンスを壊し自分がした大便を食べた
● 親から身体に異物を入れられたと思い、包丁で自分の腹を切り腸を引っ張り出した後、裸で街中を走り回った。
● 突然暴れだし意識不明となり死亡● 身体がしびれ、寒気、気持ち悪くなり暴れた後意識不明で病院搬送されるも一時心肺停止状態
● 液体と粉末状の危険ドラッグを口にし、腹痛としびれ、呼吸困難になっ
● 危険ドラッグを約10年間使用していた男性が首吊り自殺で死亡

– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)

引用元⇒ href=”http://www.k4.dion.ne.jp/~care/yakubutsu.html

 

 

危険ドラッグの怖さは、中身の成分がわからないことつまりどのような症状が出るかわからないこと、そして「記憶が完全に飛ぶこと(覚醒剤の場合は自分の行動を覚えていることが多い)」であり、値段も安価のため、依存性は覚醒剤よりも強いことです。

 

自力で簡単に欲求遮断したりコントロールできるのであれば、それそれを中毒とか依存症とは言いません。離脱症状を何とか乗り越えても、結局また再び手を出してしまう、というのが依存症なんですね。(これは薬物依存だけに限りませんが。

 

つまり「危険ドラッグ」はドクター側からみても「どのような投薬で症状を抑えたらいいのか」が予測しづらいだけでなく、この手の薬への「強力な依存性」を治療するのも大変なことであり、日々試行錯誤の過程であるわけです。

 

 

ではラストに、ICD10 (国際疾病分類第10版)とDSM-IV での「依存症」の診断基準を外部サイト「脳科学辞典・依存症」から引用・紹介し記事の終わりとします。

 

このサイトでは、依存症の脳内メカニズムもシンプルにわかりやすくまとめてありますので参考にどうぞ。(※ 記事下にリンクあり

 

ICD-10(国際疾病分類第10版)

ICD-10の診断基準において依存症は「精神作用物質使用による精神および行動の障害」の分類の一つである依存症候群として扱われている。

診断基準:以下のうち3項目以上が過去1年間に同時に存在すること。

1.物質摂取への強い欲望、強迫感
2.物質摂取行動の統制困難
3.離脱症状
4.耐性の増大
5.物質摂取中心の生活
6.有害な結果が起きているにもかかわらず物質を使用

DSM-IV
DSM-IVの診断基準においては物質関連障害が物質使用障害と物質誘発性障害から構成され、物質使用障害は物質依存と物質乱用から構成される。

物質依存は臨床的に重大な障害や苦痛を引き起こす物質使用の不適応的な様式で、以下の3つ(またはそれ以上)が、同じ12ヶ月の期間内のどこかで起こることによって示される。

1.耐性、以下のいずれかによって定義されるもの:

   A. 酩酊または希望の効果を得るために、著しく増大した量の物質が必要
   B. 物質の同じ量の持続使用により、著しく効果が減弱

2.離脱、以下のいずれかによって定義されるもの

   A. その物質に特徴的な離脱症候群がある
   B. 離脱症状を軽減したり回避したりするために、同じ物質(または密接に関連した質)を摂取する

3.その物質をはじめのつもりよりも大量に、またはより長い期間、しばしば使用する

4.物質を中止、または制限しようとする持続的な欲求または努力の不成功のあること

5.その物質を得るために必要な活動(例:多くの医者を訪れる、長距離の運転をするなど)、物質使用(例:立て続けに喫煙など)、または、その作用からの回復などに費やされる時間の大きいこと

6.物質の使用のために重要な社会的、職業的または娯楽的活動を放棄、または減少させていること

7.精神的または身体的問題が、その物質によって持続的、または反復的に起こり、悪化しているらしいことを知っているにもかかわらず、物質使用を続ける。

cube01-007 引用・参考サイト⇒  依存症

 

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