毒親と毒社会のマインドコントロール  

 

「灯台もと暗し」ということわざがありますが、私たちは「目に見えるハッキリした対象・結果」だけに注意をひきつけられやすい生き物です。

 

例えば「マインドコントロール」という言葉。こういうものはカルト宗教や特別な犯罪などだけで行われていると普通はそう思いがちです。

 

そして暴力や詐欺などもそうです。 ですが、より大きく巧妙で、すっぽりと私たちを覆っている巨大な悪意や支配原理や人心操作などは、あたかもそれを「当たり前のこと」として受け入れやすいですね。

 

カルトに巻き込まれた人がその構造に気付いて縁を切り、そういう閉じた世界を完全に離れることが出来ても、それは一つのマトリックスを抜けたのに過ぎません。

 

ここで、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏(オランダのジャーナリスト)の著書である「人間を幸福にしない日本というシステム」の冒頭文を紹介します。

 

「この人生はどこかおかしい」と、多くの日本人が感じている。居心の悪さを感じている日本人の数は、実際、驚くほど多い。そしてこ不満は、あらゆる世代、ほとんどの海草に広がっている。

その不満の原因は、人間誰しもがしょいこむ個人的問題や家族にまつわる厄介事だけではない。周囲の社会の現実(リアリティ)も、なにかモヤモヤとした不満の原因になっている。

なぜ、この国には学校嫌いの子供がこれほど多いのか? なぜ、この国の大学には、表情が暗く、退屈そうで、なんのりそうもないとすら見える学生がこれほど多いのか?

なぜ、この国の女性は世界一晩婚なのか?そして、なぜ結婚しないと決めてしまった女性の数も驚くほど多いのか? また子供を産まないと決めた女性も多い。なぜか?   ー 引用ここまでー

 

 

日本は世界トップクラスの自殺率(若者の自殺率はトップ)、そしてGDP3位でありながら全く心も生活にも余裕や豊かさを感じず、圧倒的に低い国民の幸福度。

 

しかも未来を担うはずの若者の日本社員の仕事のヤル気のなさ先進国28ヵ国中でダントツの最下位。

参考 ⇒  イジメと闘争社会の心理 part2 -世界に評判がいい日本人  良い子は善人?幸福?

 

社会システムというものは何のためにあるのでしょうか?それはそこに暮らす人にシステムが仕え支えるのが本来の形です。システムが人に仕えるからこそ人はそこで支えられ生かされるのです。

 

ですが現代は「人がシステムに仕えている」状態ではないでしょうか? 使い捨てのようにこき使われた挙句にリストラされても退職金も雀の涙。そして最後は見捨てられたような孤独な老人になって終わりです。

 

庶民が社会的な失敗やミスをすれば、本当の意味で再チャレンジできるシステムなど殆どなく、「手厳しい先細りの現実」が待っていますが、官僚や既得権益者、権力者たちはどうですか?

 

彼らはつるんで癒着して金と権力にものをいわせて身内をかばい、都合の悪いものは密室会議で処理して隠し、メディアを操作して世論の矛先をかわし、手厚い保護を受けて安全無事に天下り、

 

そして仮に失敗してすっぱ抜かれても頭を数回下げて辞めるだけでよく、庶民からは考えられないような高額な退職金と再就職先までガッチリ用意されてあるわけです。その金はみな我々の税金です。

 

私たちは騙されていませんか?あたかも「弱者を守るシステムそのもの」が税金の無駄使いように印象操作されていますが、もちろん無駄に使われている部分やそれを悪用している人々もいるのでしょうが、

 

それはシステムの悪用という話であって、システムそのものが悪いということではありません。

たとえば生活保護の不正受給の問題ですが、不正受給は実は0.5%に過ぎないんですね、世間ではやたら不正

受給、不正受給って大騒ぎして「負の同調圧力」を作り出していますが。

 

不正受給の実態やこの問題に関連する記事を以下に幾つか紹介しておきますね、参考にどうぞ。

生活保護予算の99.5%は適正に執行されている。「不正ゼロ」主義の問題点
『本当に困っている人』だけを選別しようとすると、かえって救えなくなる――。
生活保護受給者の自殺率が2倍以上高い、その理由に迫る
「生活保護バッシング」がやまない本質的理由

 

そもそも弱者を守るシステムは、「未来のあなた」にとってのためでもあるんですよね。いつ何時あなたが弱者の立場になっても、それを守ってくれるはずのシステムというのが本来のシステムの役割なわけですから。

 

年金も雀の涙、老後の保障、弱者復活の道もない「使い捨ての切りて型システム」、それが多くの庶民の置かれている状況であり、

 

いい加減、弱者や一般庶民同士で争うのは終わりにしたほうがよいと思いますね。 そういう印象操作に惑わされず、変えるべきは社会や組織の上部の在り方・システムです。

 

毒親とカルトは同じマインドコントロールを使う

 

毒親と呼ばれる人々は、基本的に社会の支配原理や権力者の姿、彼らのやってる搾取の構造や人心操作・印象操作・同調圧力とよく似た手を使います。

 

というよりも、カルトや過激な新興宗教も毒親も、社会の負の力学が生み出した「小さなモンスター」でもあるんですね。同じ穴のむじなです。

 

何故、カルト信者が組織を「心身共に」出れないのか? そして何故、毒親とわかっていながら簡単に心身共に抜け出せないのか? 心理学的に見ると、その理由は人それぞれにあるたしても、

 

おそらく傾向として、そこを出ても「ラベルが違うだけの同じ原理の世界」があると感じているからでしょう。

 

その場所を抜け出てもその先の場所が見つからない」、カルトを抜け出ても、また違う名前のカルト(カルトとは呼ばれていない)があるだけのように感じているからではないでしょうか。

 

そこを「心身共に出た人」というのは、社会に出たから心身が元に戻わけではなく、その人を受け入れてくれる人・場所がまだあったからであり、あるいはそれを見つけることが出来たから心身共にそこを出れた、というだけでしょう。

 

「そうでない人」の場合は、外に出ていても心はまだ「その中」にあるのではないでしょうか?

 

では何故、彼らはそういうカルトのような人・組織に吸い込まれたのでしょうか? それも人それぞれでしょうが、その傾向として考えられるものを心理学的にシンプルに見た場合、

 

おそらく熱心な人ほど、その人が関わっている現実の「人・社会」にらかの意味で深く幻滅していたからじゃないですか?

 

では何故幻滅したのでしょうか?それは社会のシステムと上層部の在り方・価値観によって強化された「不調和な社会と人の生き方」に迎合し、今後ずっとそうやって流されて生きる人生を送っても、

 

「その先にある不毛」が「今見えている」ことからの「冷めた気持ち」が根底にあるからでしょう。

 

そしてそれは毒親の問題、機能不全家族にしても本質は同じものでしょう。だから彼らは家庭も社会も捨てたくなったのではないでしょうか。

 

ですがこれってカルト信者や毒親に育てられた人だけが感じることでもないですよね。潜在的にはもっと遥かに多いんじゃないですか?同じようにそう感じる人々は。

 

心理学的に見ると、自殺者の中には、カルトに入るのと似たような「社会に幻滅した心理」で、「生きることを辞める人々」が数多くいると推定できます。

 

だからカルトに入る人は「自殺的な心理状態で生きようとした人」とも言えますね。「潜在的な人々」の中でより精神的に追い込まれた人や、疑問が強かった人、そして現実に深く失望し見切りをつけた人が、

 

たまたま「非社会的なその場所」に入り、「そこだけが安全な場所」だと感じ「自身の居場所・生きる目的だ」と、そう感じたのでしょう。

 

ですがそこもまた社会と同じ支配と抑圧の階層構造のカラクリがある場所に過ぎず、しかも閉じた世界のその領域はさらなる過剰な支配が待ち受けている異常空間だったというわけです。

 

これはある意味、集団自殺行為集団的精神病理の表れであり、その背景に「社会の病理」があるわけですが、自殺同様に「自己責任」ということで片付けられるわけです。

 

毒親とカルトはよく似ています。まず極めて閉鎖的で濃い関係であること、そして力関係が圧倒的に違うこと、そして依存なくしては生きていけない状態である(あるいはそうなるように追い込まれている)こと、

 

そして徹底的な価値観や正しさの植え付けがされていることで、見た目以上の束縛が強力に働いていること、などですね。

 

 

 

以下の二つの心理学的な概念も、毒親を見ていくうえで参考になるので簡単にまとめて紹介しておきます。

 

ストックホルム症候群/ 愛着理論

愛着理論は、心理学者であり精神分析学者でもあるジョン・ボウルビィによって確立された。

発達心理学者のメアリー・エインスワースによる1960年代から1970年代の研究は、愛着理論の基本的な概念を確立した。

「安全基地」という概念を 提案し、また幼児における愛着行動のパターンを分類し、「安全の愛着」、 「回避の愛着」、「不安の愛着」の3つに分けた。

4つ目の愛着パターンは、「混乱の愛着」であるが、後で発見された。1980年代には、愛着理論は、大人にも拡大された。

愛着行動の一要素として含まれる可能性があるのは、全ての年齢における同僚との関係、性的吸引力、幼児や 病人や老人がケアを必要としていることなどである。

● ストックホルム症候群・1973年8月に発生したストックホルムでの銀行強盗人質立てこもり事件において、人質解放後の捜査で、犯人が寝ている間に人質が警察に銃を向けるなど、人質が犯人に協力して警察に敵対する行動を取っていたことが判明した。

また、解放後も人質が犯人をかばい警察に非協力的な証言を行ったほか、
1人の人質が犯人に愛の告白をし結婚する事態になったことなどから名付けられた。

(中略)

ストックホルム症候群は恐怖と生存本能に基づく自己欺瞞 的心理操作
(セルフ・マインドコントロール)であるため、通常は、人質 解放後、
犯人に対する好意は憎悪へと変化する。

参考 ⇒ ストックホルム症候群
● 愛着理論・愛着理論(あいちゃくりろん、Attachment theory )は、心理学、進化学、
生態学における概念であり、人と人との親密さを表現しようとする愛着行動 についての理論である。

子どもは社会的、精神的発達を正常に行うために、少なくとも一人の養育者と親密な関係を維持しなければならず、それが無ければ、子どもは社会的、
心理学的な問題を抱えるようになる。

参考 ⇒ 愛着理論

 

 

それでは記事の最後に、この生きづらい世を生きる若者へ、アマザラシの

『ラブソング』、「愛の歌」でしめたいと思います。

 

amazarashi 『ラブソング』

 

 

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